急激なインフラ拡大期を終え、カーシェアリング市場は2013年以降安定成長期に入った。2015年は、アース・カーを除く4位以降の失速がみられたが、市場全体では、2016年も利用ニーズの高いエリアを中心にステーション数、車両台数の増加がつづくものと予想される。
ステーション数・車両台数とも2015年と変わらぬペースで増やし続けると思われる「タイムズ カー プラス」。2016年は利用ニーズの高い都内に集中し、ステーション数と車両台数の増加を目指す「カレコ・カーシェアリングクラブ」。ステーション数・車両台数とも堅実に増やしたものの、2015年は両者を、まるで静観する格好となった業界パイオニアの「オリックスカーシェア」。カーシェアリング利用者100万人時代の到来を目前にして、3強はどう出るか。まだまだ分からない上位3社の動向から2016年も目が離せない。
以下では、2015年の市場動向と主要トピックスをもとに、2016年のカーシェリング市場動向を予測してみる。
【2016年カーシェアリング市場動向予測】
1. カーシェア人口100万人時代へのカウントダウンがはじまる。
ステーション数、車両台数の増加はつづく。ステーションのドミナント化も加速する
2015年に業界全体で、カーシェアリングの会員数は70万人に到達しているものと思われるが、2016年はさらに10万人以上の増加が見込まれ、80万人を突破する可能性もある。いよいよ会員数100万人に向けてカウントダウンがはじまったといえる。
2016年の上位3社の動向は、まず業界第1位の「タイムズ カー プラス」は、2020年までに30,000台に増やす考えを明らかにしており、今後、毎年3,000台以上のペースで増加していくことで、2020年に目標30,000台を達成する見込み。2015年12月時点で13,432台であったので、2016年12月には、16,500台程度まで車両台数を増やすことが予想される。また、ステーション数では、2014年、2015年と毎年1,400箇所以上増やしており、このペースで行くと2016年は9,000箇所に限りなく近づくものと思われ、2017年には単独でステーション数10,000箇所を突破する見込みだ。
業界第3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、2015年こそステーション数・車両台数をともに減らしたものの、これは利用者の少ない郊外ステーションを閉鎖し、利用者数の多い都内にステーションを集約したためで、2016年は都内の利用ニーズの高いエリアでステーションと設置車両を増やしていく考えを明らかにしている。実際、ステーションの改変を終えた2015年10月以降の3ヶ月間だけを見ると、ステーション数で54箇所、車両台数で110台増やしている。自転車置場併設ステーションの開設なども興味深い。
業界第2位の「オリックスカーシェア」は、上記の二者と比べると2015年にそれほど大きな動きはなく、上にも書いたとおりまるで静観する格好となった。しかし、業界初の月額基本料金無料プランを打ち出したり、2014年には日本初のワンウェイ方式カーシェアリングを開始したりと、これまでさまざまな仕掛けをしてきた業界のパイオニアであるだけに、何か新しい展開を計画しているのだろうか。法人利用が期待できるエリアへのステーション増強を図るようであり、これが個人利用にどのような影響を与えるのか興味深い。
3社ともここまで数年の運用により、ステーション開設のエリアマーケティングは、相当の知見が貯まってきたはず。利用者増が期待できるエリアへの集中的なステーション開設、車両増車も含めたドミナント化が進むのかもしれない。利用者にとっては、「使いたい場所にステーションができた」とか「借りたいときに借りられないことがなくなった」など、利便性の向上につながると思われる。
2. カーシェアリング会社が選ばれる時代へ
「カード2枚持ち」、「他社乗り換え」、「マイカー所有者の利用」
カーシェアは、毎年のようにテレビや新聞でバズワードのひとつとして取りあげられるものの、これまでどちらかというと「知る人ぞ知るサービス」だった。そして地方での認知はとても低い。
利用者は、はじめての体験にワクワクしたり、使い方に多少の戸惑いを感じたりしながらも、生活にプラスの価値を与えてくれる新しいサービスに一定の満足を得ている。
それはちょうど「ケータイ電話」の黎明期と似ていて、「外出先で電話が使える」ことへの満足にとどまり、まだ利用者がしっかりとした選択眼を持たないなかでサービスを選んでいた段階といえる。
おそらく殆どの利用者が、「自宅一番近くにステーションがある会社」とか「月額固定が一番安いとこ」で選んでいたのではないだろうか。
今後は、「自分の使い方にあった料金プランがあるかどうか」、「予約が取りやすいかどうか」、「せっかく借りるなら乗ったことのない新しい車種で」、「アウトドア用にミニバンがある会社」など、利用者がこれまでの利用経験にもとづいてしっかりカーシェアリング会社を選ぶようになっていくと思われる。
「カード2枚持ち」、「他社乗り換え」、「マイカー所有者の利用」などもさらに進んでいくかもしれない。
なかでもライフスタイルや用途に合わせて車種を選ぶことができるかどうかという点は大きい。
「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、セルリアンタワーの駐車場に開設された「スバル特設ステーション」では、半年をめどに定期的に車種を入れ替えていくことが発表されており、2016年は少なくとも2度の新車種導入が予定されている。
また、「タイムズ カー プラス」と「オリックスカーシェア」は、ファミリー層を取り込む狙いから、現在導入しているミニバンタイプの車種を既存ステーションや新規ステーションに配車していくことが予想される。
「Anyca(エニカ)」の影響も相まって、ますますこうした流れに拍車がかかるもしれない。
3. インバウンド、若者層、地方都市利用活発化の予感
「コンビニ&カーシェア」がもたらすもの
2015年の主要トピックスではあまり触れることができなかったが、2015年に「タイムズ カー プラス」はサークルKサンクスやファミリーマートと業務提携を行い、各コンビニ店舗の駐車場に「タイムズ カー プラス」の車両を設置し、「タイムズ カー プラス」のサービス提供を開始することを発表した。
2015年中に国内50店舗の駐車場に車両を設置すると発表されたが、その後ファミマとも提携し、「コンビニ&カーシェア」への本腰の入れ具合が伺われる。
全国各地どこでも目にすることのできる「コンビニ」の集客力と「カーシェア」の掛け合わせは、インパクトが大きく場合によっては大化けするのではないだろうか。
例えば、訪日外国人の利用促進、大学生など若者層への認知獲得、地方都市でも使い勝手がよい、などカーシェア利用にとって好材料が多い。
ファミリーマートの店舗には「タイムズ カー プラス」の無人入会機も設置されるとのことなので、その場で入会して、すぐにカーシェアリングを利用することも可能になる。
今後の拡大の規模によっては、「コンビニ&カーシェア」は、定番パターンになっていく可能性がある。
まずは初年度でどれくらいの利用実績があるかどうかがポイントだと思われるが、2016年は「コンビニ&カーシェア」からも目が離せない。
- 参考記事
- ・サークルKサンクスでタイムズカープラスに乗れる♪拡大する“コンビニ&カーシェア”
- ・ファミマでタイムズカープラスに乗れる!タイムズ カープラスはどこまで増えるのか?
- ・サークルKサンクスでカーシェアリングを利用できる!「Ha:mo RIDE」の小型EV「COMS(コムス)」に乗れる
- ・カーシェア入会がもっと手軽にカンタンに!その場で入会して、すぐに使える、タイムズ カー プラスの無人入会機
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※このデータは、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)が独自に収集したデータをもとに構成されています。
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