急激なインフラ拡大期を終え、カーシェアリング市場自体が安定成長期に入った2013年以降も、上位3社はステーション数・車両台数を順調に増やしてきたが、そんな最中で生じた予想外のコロナ禍の影響なのか、ステーション数は伸長率1.0%と若干増加したものの、車両台数では-0.9%と約250台の減少となった「タイムズカーシェア」。ステーション数・車両台数をともに減らし、昨年比でステーション数が-4.6%、車両台数が-9.0%となった「オリックスカーシェア」。対して、昨年ほどの伸長率の増加は見られなかったものの、ステーション数が11.3%増、車両台数が13.4%増と、大手3社の中で唯一インフラ拡張傾向を維持した業界2位の「カレコ・カーシェアリング」。全体で見ると、ステーション数が前年比2.1%増加、車両台数が0.2%増加にとどまり、インフラ拡張が初めて横ばいに転じることとなったカーシェアリング市場は今後どう変化していくのか。
新型コロナウイルス感染症の終息もまだ見えない中で、カーシェアリング利用者数は200万人を突破し、220万人に届かんとする2021年のカーシェアリング市場動向を、以下では2020年の市場動向と主要トピックスをもとに予測してみる。
【2021年カーシェアリング市場動向予測】
1. コロナ禍でパーク24がレンタカー事業からカーシェア事業に急シフト。
タイムズカーシェアの牽引により、カーシェア市場は一気に拡大する見込み。
「タイムズカーシェア」を運営するパーク24は、2021年度に380億円を投資し、カーシェア事業を強化することを発表した。新型コロナウイルスの感染終息が見えない中、通勤時などに鉄道やバスの利用を控えてカーシェアを利用する人が増えており、パーク24はカーシェア車両を現行の2.7万台から4万台にまで一気に増やす計画である。
これまでパーク24は、レンタカー事業をモビリティ部門の一番の柱としてきたが、コロナ禍の影響で出張やレジャー時の移動手段として利用されるレンタカー事業は大打撃をこうむり、現在も利用件数は前年同月の半分程度の状況が続いている。そのため、パーク24はレンタカー事業の縮小し、コロナ禍で3密回避のモビリティとして注目されるカーシェア事業へ急速にシフトしていくことを決めた。
こうしたパーク24の戦略転換により、2021年のカーシェア市場では、ステーション数と車両台数が大幅に増加する見込みだ。2020年に大手3社の中で唯一ステーション数と車両台数で増加を見せたカレコ・カーシェアリングも、引き続きインフラ拡張を継続していく模様であり、2021年はカーシェア市場の停滞傾向が一気に解消されると予想される。
2020年にステーション数と車両台数の増加で、はじめてほぼ横ばいの推移を経験したカーシェア市場の2021年に期待したい。
2. 200万人突破後もまだまだ増えるカーシェア人口。
コロナ禍でカーシェアの潜在需要が顕在化し、利用者数は240万人に。
2020年3月時点で、業界全体のカーシェアリングの会員数は200万人を突破し、12月末時点で220万人に到達しているものと思われるが、2021年は新しい生活様式に合致したカーシェアの3密回避モビリティという特徴が2020年以上に注目され、カーシェアの潜在需要が顕在化することで利用者はさらに増えることが予測される。
また、1でも見たように、「タイムズカーシェア」を運営するパーク24は、今年カーシェア事業に380億円を投資し、車両台数を現在の2.7万台から4万台にまで一気に増やすことを発表しているが、こうしたインフラの拡張に相関して利用者も増大し、国内のカーシェア市場は急激に成長することが見込まれる。
こうした背景を踏まえると、2021年はカーシェア利用者が少なくとも240万人にまで到達することが予測される。コロナ禍の影響により、今後はこれまで利用を考えてこなかった人が、様々なシーンや用途で利用されることが予測されることが考えられるカーシェアリング。インフラ拡張により、利便性も向上するため、2021年はこれまで以上の利用者の増加が予測される。
2021年もカーシェアリング市場から目が離せない。
3. 生活様式の変様で、カーシェア利用にも変化が。
これまでの都市部での法人利用から郊外での個人利用へ。
新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変様と人の移動の変化によって、テレワークが普及し始めた。これまでカーシェア利用では、都市部を中心とした法人利用や観光利用がかなりの割合を占めていたが、コロナ禍でのテレワークの普及により、2020年は従来の需要が減少し、自宅を拠点とした個人利用が増加した。
通勤時などに鉄道やバスの利用を控えてカーシェアを利用する人も増えており、こうした流れは2021年も継続することと思われる。
こうしたカーシェア利用の変化に各事業者も対応を急いでおり、今後はこれまでのような都市部の駅前などに拠点を構え、平日は法人利用、休日は観光客利用といったニーズに合わせたビジネスモデルから、郊外の住宅地などの利用者の居住権内にステーション数を増やすことで利用者のニーズに対応していくビジネスモデルに転換していくことが予想される。
今後は、ますます人々の生活の足として利用されることが増えて行くと予測されるカーシェアリング。利用者が用途や目的や自分のライフスタイルにあわせてサービスを選択できるカーシェアリング多様化の加速に期待がもたれる。
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※このデータは、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)が独自に収集したデータをもとに構成されています。
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