急激なインフラ拡大期を終え、カーシェアリング市場は2013年以降安定成長期に入ったものの、上位3社は2017年もステーション数・車両台数を順調に増やし、今後もまだまだ市場は成長し続けるのではないだろうか。
2020年の車両台数30,000台到達を目指して、ステーション数・車両台数とも2017年と変わらぬペースで増やし続けるであろう「タイムズ カー プラス」。2017年は三井不動産リアルティの吸収合併によりステーション数、車両台数とも過去最高の増加数であった「カレコ・カーシェアリングクラブ」。業界第3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」の猛追を受けるも、堅実にステーション数・車両台数を増やし、ユーザーの利用促進に注力する業界パイオニアの「オリックスカーシェア」。
カーシェアリング利用者数100万人を突破し、次のステージに突入した2018年。自動車メーカーのカーシェア事業への参入も本格化することが予想され、新たな時代の幕開けに相応しい様相を呈したこの年に、カーシェアリング市場はどう変化し進化を遂げていくのか。
以下では、2017年の市場動向と主要トピックスをもとに、2018年のカーシェリング市場動向を予測してみる。
【2018年カーシェアリング市場動向予測】
1. 自動車メーカーの参入により、カーシェア業界の構図に変化が。
新時代の幕開けにより多様化するカーシェア。
2018年は、自動車メーカーによる参入により、これまでになくカーシェア市場が多様化する兆しを見せている。
2017年12月8日に日産自動車は、2018年1月15日より日本国内でカーシェアリングサービス「日産e―シェアモビ」のサービスを開始することを発表した。カーシェアに使用する車種は、日産の先進技術を体感できる電気自動車(EV)の新型「リーフ」と「ノートeパワー」で、まずは3月末までに東京、神奈川、静岡、大阪、兵庫、滋賀、京都、奈良、和歌山の9都府県30箇所にステーションを開設し、サービス提供を行う予定だ。
また、ホンダは2017年12月から、大阪地区でカーシェアリングの利便性を組み合わせた会員制レンタカーサービス「エブリ・ゴー」のサービスを開始した。「エブリ・ゴー」は、ホンダが2013年11月から東京地区で行ってきた実証事業「ホンダカーズスムーズレンタカー」をリニューアルしたサービスで、東京地区だけでなく既に横浜地区でも展開しており、大阪で3地区目の展開となる。
「日産e―シェアモビ」は入会金無料、月額基本料金18年7月末まで無料、15分200円の短時間利用だけでなくお得で多様な料金パックを設定、免許証を会員カードとして利用するなど、他の事業者に比べて入会ハードルが低く、これまでのカーシェアユーザーだけでなく、多くの新規ユーザーをも獲得することが予想される。日産自動車は将来的に、車種とサービス展開エリアを拡大し、サービスも拡充していく考えを明かしている。
また、2017年9月に発売された新型「N-BOXカスタム」をカーシェア車両として導入したホンダの「エブリ・ゴー」は利用者からの人気も高く、現在展開しているステーション数は91箇所で車両台数は142台。既に会員数は1万人に達している。
こうした自動車メーカーからの参入は、既存事業者にとって大きな脅威となることが予想されるが、カーシェア利用者からすれば選択肢が増えることは大きなメリットであり、また各社の競争によりサービス内容がますます向上すれば利用者数も増加しカーシェア市場自体の拡大にもつながることから、カーシェア業界にもたらすメリットも高い。
こうした自動車メーカーの市場参入により、カーシェア業界の構図が変化し、カーシェアサービスの多様化の波が押し寄せることが予測される2018年。今後、カーシェアリング市場はどのような変遷を遂げていくのか、今から楽しみである。
2. 100万人突破後もまだまだ増えるカーシェア人口。
ステーション数、車両台数ともに増加はつづき、拡大するカーシェアリング市場
2017年末時点、業界全体で、カーシェアリングの会員数は120~130万人に到達しているものと思われるが、2018年も自動車メーカーの参入やNTTドコモ「dカーシェア(R)」による展開など、新たなモデルの登場により、カーシェアユーザーのすそ野はますます広がっていくと思われる。
2017年の上位3社の動向は、まず業界第1位の「タイムズ カー プラス」は、「2017年主要トピックス」でも触れたように2020年までに30,000台に増やす考えを明らかにしており、今後も毎年3,000台以上のペースで増加していくことで、2020年に目標30,000台を達成する見込み。2017年12月時点で約20,000台に対して、2018年12月には、23,000台まで車両台数を増やすことになる。また、ステーション数では、約1,400箇所増加し、「タイムズ カー プラス」単独で10,000箇所を突破した。2018年も勢いはとどまらずに約1,200~1,400箇所の増加が予想される。
第3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、「2017年主要トピックス」でも見たように三井不動産リアルティによる吸収合併によって、車両台数907台、ステーション数470箇所増加といった、2016年の拡大路線以上の増加数を記録した。カレコのインフラ拡張傾向は2018年も継続することが予想され、おそらく今年も昨年同等の増加数になることと思われる。
2016年、2017年は利用者増が期待できるエリアへの集中的なステーション開設、車両増車も含めたドミナント化が進んだ1年であったが、この傾向は2018年も変わらない模様。利用者にとっては、「使いたい場所にステーションができた」とか「借りたいときに借りられないことがなくなった」など、利便性の向上につながると思われる。
2018年も「タイムズ カー プラス」と「カレコ・カーシェアリングクラブ」の2ブランドのけん引によって拡大するカーシェアリング市場から目が離せない。
3. カーシェア業界第2位と第3位が逆転。
インフラ拡張傾向のカレコの大躍進に期待
「カレコ・カーシェアリングクラブ」のインフラ拡張の勢いはとどまるところを知らないが、このままいけば業界第2の「オリックスカーシェア」を車両台数とステーション数で追い抜くことは必至となった。
会員数で見れば、2017年3月時点で「カレコ・カーシェアリングクラブ」が5万7千人、「オリックスカーシェア」が17万人とまだまだ両者の間に開きはあるものの、「オリックスカーシェア」のステーション数は2017年12月時点で1,630箇所。対して、「カレコ・カーシェアリングクラブ」のステーション数は1,500箇所とあと130箇所に迫る勢いを見せている。また、2017年12月時点の「オリックスカーシェア」の車両台数は2,700台であるのに対して、「カレコ・カーシェアリングクラブ」の車両台数は2,400台とあと300台で抜くことになる。
おそらく、2018年の第一四半期中に両者の順位は交代することになると予想される。
「オリックスカーシェア」は業界のパイオニアであるだけに、今後の巻き返しに期待したいところだが、「カレコ・カーシェアリングクラブ」の大躍進はまだまだ続くものと予想される。「カレコ・カーシェアリングクラブ」には、カーシェアリング業界のさらなる活性化のために、このままの勢いで少しでも独走状態にある業界第1位の「タイムズ カー プラス」に接近することに期待したい。2018年は「カレコ・カーシェアリングクラブ」の動向に注目である。
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※このデータは、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)が独自に収集したデータをもとに構成されています。
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