急激なインフラ拡大期を終え、カーシェアリング市場は2013年以降安定成長期に入ったものの、上位3社は2018年もステーション数・車両台数を順調に増やし、今後もまだまだ市場は成長し続けるものと思われる。
2020年の車両台数30,000台到達を目指して、ステーション数・車両台数とも2018年と変わらぬペースで増やし続けるであろう「タイムズ カー プラス」。三井不動産リアルティの吸収合併により、ステーション数、車両台数とも過去最高の増加数であった2017年と同水準で2018年も増加した「カレコ・カーシェアリングクラブ」。ステーション数と車両台数で「カレコ・カーシェアリングクラブ」の後塵を拝したかたちになるも、ステーション数・車両台数を堅実に増やし、ユーザーの利用促進に注力する業界パイオニアの「オリックスカーシェア」。
カーシェアリング利用者数150万人を突破し、200万人に届かんとする2019年。自動車メーカーのカーシェア事業への参入も本格し、新たな時代に突入したこの年に、カーシェアリング市場はどう変化し進化を遂げていくのか。
以下では、2018年の市場動向と主要トピックスをもとに、2019年のカーシェリング市場動向を予測してみる。
【2020年カーシェアリング市場動向予測】
1. 自動車メーカー各社がカーシェア事業に本格参戦。
シェアを広げ、市場はますます活気づくカーシェア。
2020年も2019年同様、カーシェア市場に本格参入を果たした自動車メーカーやレンタカー事業者などが勢力を拡大していくものと思われる。
「2019年総括版 主要トピックス」の「5」でも触れたように、2019年は、スズキとダイハツ東京が新たにカーシェアリング市場に参入した。自動車メーカーでは、既にトヨタ、日産、ホンダが参入しており、今回参入を果たしたスズキとダイハツを合わせると、メーカー5社がカーシェアリングサービスを提供することになった。(※ダイハツ広島は、既にカーシェアサービスを提供している。)
スズキはまずスマートバリュー、丸紅とともに大阪府豊中市のスズキ四輪車販売店や周辺駐車場を使った郊外型カーシェアリングサービスを実証実験という形でスタートさせたが、2020年は本格的な事業参入に向けて、さらに規模を拡大していくものと思われる。
また、ダイハツ東京はダイハツ東京本社併設の「Dモール月島店」など駅近隣に店舗を構える一部店舗でサービスを開始したが、今後規模を拡大し、人気の高い新型「タント」やスポーツタイプの「コペン」を用いてダイハツ車に〝チョイ乗り〟できる機会を増やすことで「ダイハツファンを増やす」狙いだ。
いち早くカーシェア事業に乗り出したホンダは、「エブリ・ゴー」を2017年11月にスタート。東京と横浜からサービスを開始し、現在は大阪でもサービスを行っている。今後はさらにサービスエリアを拡大し、さらなる会員数の獲得を目指すことが予想される。
18年1月から「eシェアモビ」を始めた日産は、取り扱い車種を電気自動車「リーフ」とハイブリッド車「eパワー」に絞っているのが特徴だ。しかも、上位グレードを配置することで、電動自動車の魅力を訴求する狙いがある。2019年9月時点で全国に535台を配備しており、2020年はさらに車両台数を増加するものと思われる。
販売店改革の一環としてカーシェア事業を位置づけているトヨタは、現時点ではまだ実証実験の段階であるが、入会金と月会費は無料、利用料金も他社に比べて割安に設定している。現在は都内が中心だが、広島や福岡などエリアが広がっており、今後全国展開する方針だ。
自動車メーカー勢が本格参戦を果たし、ますます拡大していくことが予測されるカーシェア市場。今後、カーシェアリング市場はどのような変遷を遂げていくのか、今から楽しみである。
2. 180万人突破後もまだまだ増えるカーシェア人口。
ステーション数、車両台数ともに増加はつづき、利用者数は200万人に。
2019年末時点、業界全体で、カーシェアリングの会員数は180万人に到達しているものと思われるが、2020年は自動車メーカーがカーシェア市場に本格的に参入したことで、市場全体のステーション数と車両台数はますます増加するものと思われる。また、新興勢力だけでなく、これまでカーシェア市場をけん引してきた上位3社も引き続きインフラ拡張に力を入れており、これによって利用者数はさらに増え、2020年は利用者数が200万人に到達することが予測される。
上位3社の動向として、まず業界第1位の「タイムズ カー プラス」は、「2019年主要トピックス」でも触れたように2020年中に車両台数30,000台に達成する見込み。2019年12月時点で約27,000台なので、1年で3,000台増車することになる。また「タイムズ カー プラス」は、ステーション数では2019年に約1,600箇所増加しており、「タイムズ カー プラス」単独で13,000箇所を突破した。2020年も勢いはとどまらずに2019年と同様の増加が予想される。
第2位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、「2019年主要トピックス」でも見たように車両台数719台、ステーション数326箇所増加し、2018年の増加数を若干下回ったものの、ほぼ横ばいでインフラ拡張を続けている。カレコのインフラ拡張傾向は2020年も継続することが予想され、おそらく今年も昨年と同等かあるいはそれ以上の増加数になることと思われる。
2019年は2018年同様に利用者増が期待できるエリアへの集中的なステーション開設、車両増車も含めたドミナン化が進んだ1年であったが、この傾向は2020年も変わらない模様。利用者にとっては、「使いたい場所にステーションができた」とか「借りたいときに借りられないことがなくなった」など、利便性の向上につながり、新たな利用者も2020年以上に増えることは確実だと思われる。
2019年も「タイムズ カー プラス」と「カレコ・カーシェアリングクラブ」の2ブランドのけん引によって拡大するカーシェアリング市場から目が離せない。
3. 新たなカーシェアサービスの誕生により、カーシェアリングはますます多様化。
利用者が自分のライフスタイルに合ったカーシェアを選ぶ時代へ!
これまで日本においてカーシェアリングと言えば、企業が利用者にカーシェアリングサービスを提供するB to Cカーシェアと同義であったが、2015年にDeNAが提供する個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」が登場し、2017年にはドコモが「dカーシェア」の提供を開始したことで、市場状況はかなり変化した。
そして、2019年には新たなカーシェアリングサービスである「Anyca Officialシェアカー」の運用が開始され、カーシェアリングはさらに多様化したといえる。この「Anyca Officialシェアカー」は、運営会社であるDeNA SOMPO Mobility(以下、DSM)は、DSMが用意したカーシェア車両を、オーナーが自らの駐車場で管理し、この車両を一般ユーザーが無人で借り受けるというサービス。オーナーも一定回数を無料で利用できるカーシェアリングサービスである。
B to Cカーシェアと個人間(C to C)カーシェアという二つのタイプのカーシェアリングに「Anyca Officialシェアカー」が加わることによって、利用者の利便性はこれまで以上に高まることになり、カーシェア市場はさらに拡大していくことになるだろう。2020年は、利用者が用途や目的や自分のライフスタイルにあわせてサービスを選択できるカーシェアリング多様化が加速する。
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※このデータは、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)が独自に収集したデータをもとに構成されています。
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