急激なインフラ拡大期を終え、カーシェアリング市場は2013年以降安定成長期に入ったものの、上位3社は2016年もステーション数・車両台数を順調に増やし、今後もまだまだ市場は成長し続けることが予想される。
2020年の車両台数30,000台到達を目指して、ステーション数・車両台数とも2016年と変わらぬペースで増やし続けると思われる「タイムズ カー プラス」。ステーション数と車両台数で高い伸長率の「カレコ・カーシェアリングクラブ」。業界第3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」の猛追を受けるも、堅実にステーション数・車両台数ともに増やした今年15周年を迎える業界パイオニアの「オリックスカーシェア」。
カーシェアリング利用者100万人時代の幕開けを告げる2017年に、各社がどのようなサービス展開をみせるかが楽しみだ。
以下では、2016年の市場動向と主要トピックスをもとに、2017年のカーシェリング市場動向を予測してみる。
【2017年カーシェアリング市場動向予測】
1. カーシェア人口100万人時代の幕開け。
ステーション数、車両台数の増加はつづき、ステーションのドミナント化も加速する
2016年に業界全体で、カーシェアリングの会員数は90万人に到達しているものと思われるが、2017年はペースとして10万人以上の増加が見込まれ、100万人を突破するものと予測される。2017年、日本はカーシェアリング会員数100万人時代という新たなステージの幕開けを迎えることになる。
2016年の上位3社の動向は、まず業界第1位の「タイムズ カー プラス」は、2020年までに30,000台に増やす考えを明らかにしており、今後も毎年3,000台以上のペースで増加していくことで、2020年に目標30,000台を達成する見込み。2016年12月時点で16,550台に対して、2017年12月には、約20,000台まで車両台数を増やすことになる。また、ステーション数では、2014年、2015年と毎年1,400箇所以上増やしたものの、2016年は約1,200箇所の増加にとどまったが、このペースで行っても2017年中に単独で10,000箇所を突破する見込みだ。
2015年に利用者の少ない郊外ステーションを閉鎖し、利用者数の多い都内にステーション集約を開始した業界第3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、2016年に都内で積極的にステーション数・車両台数を増やした。都心部での拡大路線は2017年も継続され、「カレコ・カーシェアリングクラブ」は2017年度末をめどに、東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県で車両台数を倍増の3,000台程度に増やすことを公表している。
業界第2位の「オリックスカーシェア」は、上記の二社と比べると2015年同様2016年もそれほど大きな動きは見られなかった。しかし、アプリにガソリンスタンドを検索できる機能を追加したり、業界初の加熱式たばこ「IQOS」専用車を導入したりと、2016年もサービスの充実化を図ってきた。今年15周年を迎える業界のパイオニアが何を仕掛けてくるのかも注目のひとつだ。
2016年は利用者増が期待できるエリアへの集中的なステーション開設、車両増車も含めたドミナン化が進んだ1年であったが、この傾向は2017年も変わらない模様。利用者にとっては、「使いたい場所にステーションができた」とか「借りたいときに借りられないことがなくなった」など、利便性の向上につながると思われる。
2. カーシェアリング“大サービス化時代”へ突入。
カーシェアリング会社がサービスで選ばれる時代へ
2016年はインフラ拡張に並行して、各事業者ともサービス面の向上に注力した1年でもあった。こうしたサービス内容の充実化は、2017年も各社で積極的に推し進められていくものと予測される。
カーシェア利用者のニーズや期待値が高まっていくなか、カーシェア市場規模の拡大に合わせて各社が成長を維持するためには、これまで以上にユーザーの利用欲求を高めるようなキャンペーンや、個性あるサービスが重要な段階にきているといえる。今後は各事業者がサービスや特長で競い合う“大サービス化時代”へ突入していくだろう。
これまで、おそらく殆どの利用者が「自宅一番近くにステーションがある会社」とか「月額固定が一番安いとこ」で事業者を選んでいたものと思われるが、これからは、「自分の使い方にあった料金プランがあるかどうか」、「予約が取りやすいかどうか」、「せっかく借りるなら乗ったことのない新しい車種で」、「アウトドア用にミニバンがある会社」、「新車購入の試乗のため入会する」など、利用者がさまざまな動機やニーズでカーシェアリング会社を選ぶようになっていくと思われる。
「カード2枚持ち」、「他社乗り換え」、「マイカー所有者の利用」などは確実にはじまっているといえる。
いずれにせよ、2017年はカーシェアリング事業者がサービスで選ばれる時代へとシフトする大きな節目の年になると予想される。
3. 自動車メーカーとの業務提携が積極化する兆し。
クルマ購入の意欲を高めるカーシェアリングの可能性
カーシェアリングの普及に対して、これまで自動車業界は自動車販売を減少させる要因となると考えてきた。しかし、ここ最近はカーシェアリングを見る自動車業界の目は変わってきている。
実際に、カーシェアリング利用者が退会する理由の上位に「車を購入したから」という理由は位置しており、自動車業界からは、クルマの購入意欲を高めるサービスとしてカーシェアに注目が集まっているからだ。
こうした自動車メーカーの思惑から、今後はこれまで以上にカーシェア事業者と自動車メーカーとの業務提携が進んでいくことが予測される。
すでに「カレコ・カーシェアリングクラブ」は、東京都渋谷区のセルリアンタワーに「カレコ×スバル特設ステーション」にスバル車を導入するなど、自動車メーカーとの業務提携を積極的に進めているが、こうした新車種の導入という形での業務提携に限らず、さまざまな形での業務提携が実現することになるかもしれない。
多様な利用者ニーズにも対応することになるこうした自動車メーカーとの協業は、利用者視点から見ても歓迎されることは間違いなく、各社の積極的な施策に今後ますます期待がもたれる。
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※このデータは、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)が独自に収集したデータをもとに構成されています。
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